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40代の悲哀~歌舞伎「髪結新三」

2018.03.24

今月は、国立劇場大劇場で歌舞伎「梅雨小袖昔黄八丈 ~髪結新三」が上演されています。
尾上菊之助丈が、父親、菊五郎丈の当たり役の新三役に初挑戦することや、菊之助丈が、息子の寺島和史くんと共演することなどが話題になっています。

この演目、若手の(やくざな世界で)売り出し中の新三が、悪役の魅力を発揮するのが見どころなのです。
が、自分が年齢を意識するようになってから、新三にコケにされる親分の「弥太五郎源七」のことが気になって仕方なくなってしまいました。

どうも、7年前にこの演目を見たときに、そんな思いに駆られたようです。
その当時のアメブロ時代の記事を再掲します。
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「髪結新三」のストーリーをまず簡単にご紹介しましょう。

髪結の新三は、ある日、ひょんなことから、器量よしで有名なお熊という、大店 白子屋の娘をかどわかすことに成功します。

持参金つきの婿入りを控えていたため、困った白子屋は、地域を仕切っている大親分の弥太五郎源七にお熊を取り戻す交渉の仲介を依頼します。

大親分の出番に、最初は下手に出ていた新三ですが、お熊の身代金がたったの十両と聞き激昂。さんざんに源七をののしり、啖呵を浴びせます。源七は、人質を取られている手前もあり、その場を引き下がらざるをえません。

結局、新三が住む長屋の大家の老獪な手口でお熊は無事、家に戻ることができるのですが、恥をかかされた源七が、後日、新三を待ち伏せし…

新三にさんざんののしられ、馬鹿にされて面目を失う弥太五郎源七。

今までこの役には、たいして気にも留めていなかったのですが、これがなんと40才代であることに、今回初めて気づいたのです。

ありゃ。同世代じゃん…。

これまで自分自身が上り調子できた源七。それが新たに台頭してきた新三のような若手に追い付かれ、追い越され…これって、まるで自分自身が職場で日々、感じていることの相似形ではないですか。

40歳代というのは、公私ともに充実して組織の中核をリーダーとして担う年代です。心身面でも、一番バランス良い年代といえるのではないでしょうか。(宇宙飛行士にもこの年代の人が多く選ばれているのは、そういった理由からでしょうね(^^))

一方で、気力・体力の衰えにも直面し始めます。

そして、これまであまり意識をしなかった若手の成長にも気付かされるのです。

それは喜ばしいことである一方、自分の地位を脅かされるという恐れも伴います。

そこで、自分自身がどう変われるか。

今までのように力任せで仕事をしていくのか。

何かこれまでなかった価値を発揮できるようにするのか。

多くの40代ミドルは、充実の時を迎えながら、そんなことで戸惑っているように思います。

ところで「髪結新三」は、この戸惑いの時期を乗り越えたあとのモデルも提示してくれています。

老獪な交渉術で、お熊をうまく新三から取り返し、加えてたまっていた家賃と、初カツオ半分まで手に入れた大家がそれです。

体力的な力はなくなってしまったけれど、それを補って余りある知恵がつくのが老人。

一見、いやな登場人物に造形されている大家ですが、そう考えると、ひとつのロールモデルに見えてくるから不思議。

こんなふうに、人生のあれこれが詰まっているのも、歌舞伎の魅力なんですよね。

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