相手に言っても無駄だ…と思っている方の相談
前に「自分が我慢すれあばよいから不満があっても相手に伝えない」という方の相談を取り上げました。
今回は、「言ったけれど無駄だから、もう言わないようにしている」という方の相談について考えてみます。このご相談も多いですね。
前回と異なるのは、一度は相手に伝えたことがあるか、否かです。問題解決のために、何かしらアクションを起こしたわけです。
■コミュニケーションの相手の状況や属性に着目してみると…
人に何かを伝える場合、そのプロセスを分けると以下のようになります。
1.伝える側の人間(自分)
2.伝える内容
3.伝える方法
4.伝える相手
よく目にする「問題解決研修」や「コミュニケーション研修」といったトレーニングは、2や3に着目したものです。
伝える内容が、そもそも理にかなっているか、伝え方はわかりやすいか…という観点で、コミュニケーションの改善を図ります。私もこうした研修の講師を務めることも多く、ビジネスの基本スキルとしての重要性を重々認識しています。
しかし、今回取り上げたいのは5.の「コミュニケーションの相手」です。
「言っても伝わらない」と相談される話を聞くと、多くの場合、伝えた内容は(一方の言い分からの判断ではありますが)納得できるものです。また、相談者の話し方からして、無理を言ったわけではなく、ロジカルにわかりやすく伝えているだろうなと思うのです。
では、なぜ伝わらないのか。その理由は以下の二つ、もしくは掛け合わせであると考えられます。
・相手が伝わる環境にいない
・相手の性格や価値観が伝えた内容を受け入れないものである
■「育休復帰の上司がうまくいかない」
育休復帰から戻ってきたばかりの女性上司についてご相談のあったアラフォー女性の方の例をあげましょう。
彼女はそのベンチャーに創業初期から入社。最近、管理部門に異動になり、会社として必要な制度や仕組みを企画するようになりました。
そこに創業メンバーである女性が育休から復帰。
その上司は、休みを取る前に管理部門を統括していたこともあり、相談の彼女が取り組んでいることに口を挟んでくるのだそうです。
彼女は、その上司の休み中に組織変更があったので本当はそうではないものの、以前の業務範囲をふまえ、自分の部下のように思っているのではないかと分析しています。
角の立たないよう「それは私の責任範囲です」と伝え、他の人の手も借りて、あの手この手で口を挟まれないように防止策をとるものの、なかなか干渉はやまないそうです。
こんな時、つい「彼女は私のことを正当に評価してくれていないのではないか」「組織変更が合った意味を理解していないのではないか」と、相手の感情や能力に原因を求め、疑心暗鬼になってしまいがちです。
では、当の上司はどんなふうに今の状況を見ているのでしょうか?
相手の上司の感情を、相談者の彼女に上司になったつもりになって考えてもらいました。
「育休から帰ってきたら組織が変わっている」
「以前は自分の責任範囲だった業務は一部、別の担当の人(相談者の彼女)が担っている」
「部下も彼女(=相談者)に時折、相談に行っているようだ」
「子供がいるかて残業に制限がある。変化した今の状態を把握するのに時間がかかって焦る」
「時間の制約があるし、ブランクもできてしまったから、周りから『頼れない』と思われているのではないか、不安だ」
…考えてみた結果、実は当の上司も、制約された環境で、もしかしたら焦りや不安を感じているのではないかと推測されました。
その気持ちが、高圧的な態度となって現れてしまったのかもしれない。
…それは上司の態度としては望ましくないかもしれないですが、無理もないかも…と、相談者の彼女が思い当ったようです。
現段階で、上司の態度の改善という問題解決に直接つながったわけではありませんが、相手の感情を予想できたことで、自分も少し楽になれたと話してくれました。
今後は、相手の思いに考慮した伝え方をしてみようと、前向きな気持ちになっていただけたのです。
予想外に長くなってしまいました(^-^;。
「相手の性格や価値観が、伝えた内容を受け入れないものである」場合については、また改めて書きたいと思います。
2015/09/01 | キャリアコンサルティング コミュニケーション
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