「社会正義」の視点からキャリア支援を問い直す——研究会に参加して
2026.04.20

先日、継続的に参加している「社会正義のキャリア支援研究会」に参加しました。オンラインを含め、本研究会にはこれまで何度も足を運んでいますが、今回は改めて、「キャリア支援」という枠組みが持つ可能性と深さを再認識する貴重な機会となりました。
本日は、研究会での学びと、私の日々のコンサルティング現場での気づきを振り返ってみたいと思います。
歴史が物語る「熱量」への敬意
まずは、主催者の方が語られた設立当初のエピソードに深く心を打たれました。
「最初は参加者が集まるだろうか」という不安から始まったというこの研究会が、今や多くの専門家が集う場へと成長しています。ゼロから企画を立ち上げ、運営を続けてこられた事務局の方々の歩みに、改めて深い敬意を表したいと感じました。地道な積み重ねが、今の「社会正義」を考えるムーブメントの礎になっているのだと、温かい気持ちで拝聴しました。
「グローバルサウス」への眼差し:地域間の構造的課題への気づき
筑波大学の下村正雄先生のお話では、アフリカなどの「グローバルサウス」と呼ばれる地域のキャリア支援状況が取り上げられました。
恥ずかしながら、私自身、これまでキャリア支援のモデルといえば欧米、特に米国を中心とした文献や情報に目が向きがちでした。しかし、世界の多様な状況を知り、それらの情報がいかに限定的であったかを痛感しました。
日本国内の地域課題を考える際にも、この「サウス・ノース(南北問題)」の構造的な視点を持つことは不可欠です。当たり前だと思っていたモデルを一度手放し、より広い視点で構造を捉え続けることの大切さを学びました。
トラウマインフォームド・キャリアカウンセリングと「現場の連携」
今回、特に深く考えさせられたのが「トラウマインフォームド・キャリアカウンセリング」の議論です。
キャリア支援の定説として、「メンタル不調に触れたら専門家(臨床心理士など)へリファー(紹介)する」という役割分担が重要視されてきました。しかし、下村先生は、「本当にそれを分けて良いのか?」という疑問を投げかけられました。現場で長年、メンタル不調者の方の面談に携わっている身としては、正直、「分ける」のは無理!と感じました。
実際、キャリアの問題解決がメンタルの回復を助けることは頻繁にあります。私が考える現実的な「リファー」のあり方は、キャリアとメンタルを切り離すことではなく、それぞれの専門的な立場から情報を共有し、連携することです。
私の面談では、幼少期の経験からくるトラウマを感じる場合でも、まずは「その経験が、今、職場での言動にどう表れているか」に焦点を当てます。深い掘り下げが必要な場合はもちろん専門機関と連携しますが、決して「キャリアの専門家から」と壁を作る必要はないと考えています。「連携のためのリファー」こそが、これからの支援には求められているのではないでしょうか。
ビジネス界における「社会正義」の実装
最後に、企業の現場で「社会正義」という言葉をどう扱うかという問題提起がありました。
正直なところ、「正義(justice)」という言葉には、ビジネス界において抵抗感や政治的な過敏さを抱かれやすい側面があります。
しかし、数十年前に比べれば、コンプライアンスやダイバーシティ、エクイティ(公平性)といった概念は、着実にビジネスの現場へ浸透してきました。これらはまさに「社会正義」の実現に通じるものです。
言葉の響きに縛られすぎず、現場の課題解決プロセスの中に「社会正義」の視点をどう溶け込ませていくか。言葉を大切にしながらも、まずは日常の仕事の現場から、一つひとつ着実に改革を進めていくこと。それが、私たちができるアプローチなのだと確信しています。
今回の研究会を通じ、自身の支援スタイルを客観的に見つめ直し、明日からの仕事に向けた新たな視点を多く得ることができました。
一般社団法人WINKを通じて、「子どものいない人」の生きづらさや働きづらさの解消に取り組んでいることも、なかなか理解が進まなかったり、思うようにならなかったりと、悩ましいこともありますが、「私一人ではない」と感じることもできました。
関わってくださった皆様に感謝しつつ、現場での対話に活かしていきたいと思います。
個人の力を組織力へ。ダイバーシティ推進・ミドル活性化は朝生容子へ