研修の場は「組織のリアル」を映す鏡〜北海道でのアンコンシャスバイアス研修から
2026.08.11

先日、北海道でアンコンシャスバイアス研修の講師を務めてまいりました。 実はこの企業様での登壇は一昨年から始まり、今回で8回目となります。
当初は部長・事業部長クラスといった管理職層からスタートし、カスケード(段階)方式で対象層を広げてきました。そして今年度は、役職を持たない一般社員の皆様を対象とした研修を行っています。
研修は、「誰を対象にするか」によってゴールも設計も全く変わります。
- 初期(管理職層):ハラスメント防止・意識改革をゴールに設計
- 中期(制度移行期):一般職から地域総合職への移行という人事制度改定に合わせ、女性活躍推進の要素を強化
- 今年度(一般社員層):受講者自身が「自分の可能性に無意識の制限をかけない」こと、そして若手ならではのフレッシュな目線で組織内の無意識の偏見に声を上げてもらうことを念頭に再設計
同じテーマであっても、組織のフェーズや対象者に合わせて柔軟に内容をアプデしていくことが、研修の効果を高める鍵だと実感しています。
「声が出ない」を防ぐための仕掛けと、見えてきた希望
今回の研修を実施するにあたり、少々懸念していた点がありました。
制度変更に伴い「地域総合職」となった元・一般職の女性陣から、新たな期待役割に対する強い不安の声が上がっていると聞いていたためです。
日本の多くの伝統的企業によくある通り、長年、コース別人事制度、実質的には「性別に基づく制度」で運用されてきた組織では、研修の場にもその癖が無意識に現れることがあります。例えば、グループワークで進行や発表を務めるのは総合職(主に男性)、女性陣は無意識に書記や聞き役に回ってしまう……といった光景です。
そこで今回は、グループディスカッションに2つの工夫を取り入れました。
- ワークでの役割(司会・発表・書記など)を「交代制」にする → 地域総合職の女性にも、自然に発表の場を経験してもらうため。
- ディスカッションの前に「まず個人で考え、書き出す」プロセスを挟む → 発言に慣れている総合職に圧倒され、意見を飲んでしまうのを防ぐため。
この試みは成功でした。 自分の考えを整理してから臨むことで、地域総合職の方々からも活発な意見が出されました。
「総合職と地域総合職、お互いの仕事を深く理解するために、総合職も事務的な業務を体験する機会を作ってはどうか」といった具体的な相互理解の提案まで生まれるなど、頼もしい様子が伺えました。
若手女性総合職のモヤモヤと「マイクロアグレッション」
また、今回の研修で特に印象深かったのが、近年採用が増えてきた若手の女性総合職の皆さんから出た本音です。彼女たちの視点からは、組織に潜む「少々不思議な現象」が指摘されました。
「総合職を集めた会議の招集時、周囲から『男性陣、集まって!』と声をかけられるんです。私、女性だけど総合職なのにな……と、モヤモヤしながら参加していました」
声をかけた側に悪気や差別意図はないのかもしれません。しかし、目の前に女性総合職がいながら「男たち」と一括りにしてしまう——これこそがアンコンシャスバイアスの現れであり、悪気なく相手を疎外してしまう「マイクロアグレッション(微細な攻撃・不真面目な扱い)」の典型例です。
上司のいないオフサイト(職場を離れた場)で、部署を越えた横断的な研修だったからこそ、日頃抱えていた本音や違和感を安心して表に出すことができたのだと思います。
発言権のない人の声をどう拾うか?〜研修から生まれた現場のアイディア
嬉しかったのは、受講者の皆さんから「アンコンシャスバイアスを排し、誰もが意見を言える仕組みを通常の会議にも取り入れたい」というアイデアが自発的に出てきたことです。
「無記名で意見を書いて会議に提出する仕組み」を取り入れようという意見が複数上がりました。これは、今回の研修では、相手の立場や属性によるバイアスを防ぐため「まずポストイットに個人の意見を書く」手法をとったことを応用したのかもしれません。知らんけど…
もちろん、無記名化にはメリット・デメリットの両面があります。
- デメリット:誰の意見かわからず個別対策が取りにくい、発言への責任感が薄れる懸念がある
- メリット:立場や数の力(マイノリティ)に左右されず、率直な現状や課題感を吸い上げられる
第一の目的が「多様な人材、特にマイノリティが現状をどう感じているかを正しく把握すること」であるならば、この手法は非常に有効です。
「誰が言ったか」が分かった瞬間に、私たちは無意識に相手を評価・判断してしまいます。そしてそれは、声の小さな人やマイノリティの意見を押し込めてしまう原因になります。これは、普段から発言権があり、それを実現できているマジョリティ(多数派)層にはなかなか気づきにくいポイントです。
おわりに:たかが研修、されど研修
研修の場には、その組織が抱える現状や課題がそこかしこに映し出されます。
今回の北海道での研修を通じて、受講者の皆さんが自らの手で「話しやすい環境」や「組織の違和感」に向き合おうとする姿に、私自身も大変感銘を受けました。
外部講師という「第三者の客観的な視点」だからこそ見える組織の特徴や伸びしろを、これからも丁寧にフィードバックし、より良い組織づくりに伴走していきたいと思います。
個人の力を組織力へ。ダイバーシティ推進・ミドル活性化は朝生容子へ