その研修は「女性活躍」のためだけか?——アンコンシャス・バイアスが暴く、組織の「思考停止」
2026.03.05
先日、ある企業の管理職を対象にした「アンコンシャス・バイアス研修」に登壇しました。
当初の目的は、女性活躍推進の一環として管理職の意識を高めること。しかし、蓋を開けてみると、そこには「性別」の問題以上に根深い、組織の構造的な課題が隠されていました。
「指名」一つに現れる、目に見えない上下関係
研修中、発言者が次の発言者を指名する「バトンリレー方式」を取り入れた際、会場には独特の緊張感が走りました。
次の人を指名することに強くためらい、上長を指名する際には「申し訳ない」と釈明の言葉を添える受講者もいます。本社とグループ会社の受講者が入り混じっていることもあるのか、親会社の人を指名するのには遠慮がある様子が見受けられました。
実は、この指名方法への反応は企業文化によって驚くほど異なります。ここぞとばかりに経営者を指名して会場が沸くこともあります。知らない人同士でも、指名することに躊躇いのない会社もあります。
しかし、日本企業でやはり多いのは、今回の企業のような「秩序重視型」。
「上下関係」を重んじ、「下位」から「上位」を指名することはめったにないか、するときは非常に遠慮勝ちに行われるパターンです。
おそらく社内の会議の場でも、こうした暗黙のルールで進められるのでしょう。
「当たり前」への疑問が、言葉になり始めた瞬間
しかし、研修が進むにつれ、変化が起きました。
アンコンシャス・バイアスという共通言語を得たことで、これまで「当たり前」としてスルーしてきたことに対して、受講者の皆さんに「疑問」がわき始めたのです。
「この会社、そもそも『思考停止バイアス』に陥っているのではないか?」
研修の場で、自社の文化をこう表現する発言が飛び出しました。
さらに、ワークを通じて、「そもそも営業アシスタントの女性が会議に参加しない前提になっているが、それでいいのか?」という、これまでの組織運営のやり方を問う問題提起もなされました。
アンコンシャス・バイアス研修は「組織変革」の入り口
今回の研修で浮き彫りになったのは、女性活躍を阻んでいるのは「個人の意識」だけでなく、下位者が上位者に意見を言えない、あるいは特定の層が意思決定から排除されているというルールや規範そのものだということです。
アンコンシャス・バイアスを学ぶことは、単なる知識の習得ではありません。
自分たちが「当たり前」だと思い込んできたことがに疑問を抱き、変えていくための、強力なスイッチになり得るのです。
この研修が、新たな一歩を力強く踏み出すきっかけとなることを願っています。
組織の課題は、時として「別のテーマ」の研修をきっかけに可視化されます。
アンコンシャス・バイアスという切り口は、日頃感じている「言いにくさ」や「理不尽」を言語化するための、安全な「鏡」の役割を果たしてくれるのです。
個人の力を組織力へ。ダイバーシティ推進・ミドル活性化は朝生容子へ