歌舞伎「荒川の佐吉」を観てきました
2016.07.13
先日の歌舞伎講座で取り上げた「荒川の佐吉」を歌舞伎座で観てきました。
市川猿之助丈が初役として佐吉に挑むこの舞台。
それ以外の役も、敵役の成川に海老蔵丈、最後を締める大親分役に中車丈と初役尽くし。
話の筋の要点は、こちらの記事をお読みいただきたいのですが、今回特に印象的だったのは、初役に挑む若手役者さんたちの成長っぷりでした。
たとえば、佐吉の後輩大工の辰五郎役の坂東巳之助丈。
ついこの間まで子役であったのに…重要な役をしっかり勤められていたのが印象的でした。
昨年、父親の坂東三津五郎丈を亡くし、どんなにか悲しい不安な日々を過ごされてきたかと思うと、いっそうその健闘ぶりが光を放つ気がします。
また、佐吉や零落した佐吉の親分を裏切って出ていく娘役の米吉丈。
最近の活躍ぶりは知っていたものの、こんな重要な役だなんて予想しておらず、最初は誰だかわからなかったほど。
歌舞伎役者は、「一声二顔三姿」と言われ、口跡がもっとも需要視されます。
2人の若手役者は口跡がまだ覚束なかった頃から知っているので、重要な役を務めている様子はその頃からすると隔世の念を覚えるのです。
そして海老蔵丈。
敵役の元武士で、佐吉の親分から縄張りを奪う成川役を初役で務めています。
前半は零落した武士、後半は両国一体を収める大親分と、複雑な性格をどう演じるのか、正直心配していたのですが、これが思いのほかよかった!
思い返してみると、この人は「零落した武士」の役の時は、けっこう当たりのことが多かったですね。
名門に生まれただけに、権威のもろさやはかなさも、もしかしたら肌で感じているのが現れているのかもしれません。
こんなふうに、役者さん自身の人生と成長ぶりを確かめられるのも、歌舞伎の魅力であると再認識することができました!