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愛の不時着、「丁寧な暮らし」の化けの皮をはがす

2020.08.28

周回遅れで見た「愛の不時着」。
冒頭の写真は、リ中隊長の家にある食器が、自分の家のものと同じかと思って興奮とともに検証した時の写真です(違ってました😿)

男女二人の描かれ方が、性別役割にとらわれていないという、ジェンダー論から語られることも多いですね。どちらかが一方的に庇護するのではなく、二人がイコールな関係でお互い助け合う構図が、現代の女性の嗜好にマッチしているという言説をよく見ます。

まったく同感ですが、特に私が非常に印象的だったのが、ヒーロー役のリ中隊長が、やたらと料理をすることでした。

1人で自宅の台所で、ヒロインのセリのために麺を打ったり、コーヒーを入れたりする。時には中隊の面々と一緒に庭で料理をします。

極めつけはクライマックスのシーン。ネタバレになるので詳細は避けますが、彼が作ったと思われる料理の品々が冷蔵庫に並ぶシーンは圧巻でした。

軍人として敵と戦い、不正を暴くのもかっこいいですが、なんといってもこうして日々の生活をきちんと送っているのが、リ中隊長の何よりの魅力だと思うのです。

それに対して、ヒロインのセリは、高級料理を食べ、部屋も豪華ですが、自分でそうした生活の諸事に手を出すことはしていません。ビジネスの成功に向けて邁進しています。

そうなった背景には、彼女の家庭の複雑な事情も絡んでいるのですが、それはおいておいて…。

リ中隊長も、周囲の人間も、そうした彼女のことを「女性らしくない」「もっと丁寧な生活をするべきだ」と糾弾したり、ネガティブな評価をほのめかすことは一切ありませんでした。(豪華なレストランの食事はほとんど食べないのに、リ中隊長や北朝鮮の家庭料理には舌鼓を打つ様子は描かれていますが)。

「丁寧な生活を送ろう」という言葉がいつから言われるようになったのか記憶は定かではなりませんが、それは忙しく働く女性を苦しめる言葉になってきたように思います。なぜなら、「丁寧な生活」は、暗に女性を対象としたメッセージだったからです。「丁寧な生活」を送るロールモデルは、そのほとんどが女性でした。

自炊をせず外食が続いたり、家の中の整理や掃除ができていなかったりという日々を送る人に罪悪感を持たせました。一生懸命働いているにもかかわらず。

でも、「愛の不時着」では、使うものにこだわりはあるものの、家の中のことは人任せにしてビジネスの成果を追求するヒロインを否定しません。そして、「丁寧な生活」は、男性主人公の生活の中に体現してみせます。

その構図が私には非常に新鮮に感じられました。

このドラマ、こうした従来のメディアが描いた男女の構図をひっくり返すシーンがいくつかあります。そんな新しさと、昔ながらのロマンティックな恋愛シーンをうまく組み合わせているのが何とも魅力的なのです。

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