残された思いを受け止めて…歌舞伎「忠臣蔵」
2013.12.15
12月14日…といえば忠臣蔵討ち入りの日ですね…
というのは、歌舞伎ファンだけでしょうか(^^;)
東銀座の歌舞伎座では、先月から2カ月連続で配役を変えて「仮名手本忠臣蔵」を上演しています。
なかなかゴージャスな配役ということもあり、うきうきと観に行ってまいりました。
有名な話なので、改めてのあらすじ解説は不要かと思いますが…
ざっくり話すと、意地の悪い上役(高師直)にいじめられて頭にきた地方の大名(塩冶判官)が、
その上役に江戸城内で斬りつけけがをさせ、罰としてお家とりつぶしにあります。
喧嘩両成敗のはずなのに、上役の方がおとがめなし。
切腹させられた大名の無念と、突然、浪人となってしまった武士たちの思いを受けとめ、
家老の大星由良之助は、おとり潰し事件から1年9ケ月かけて、仇討ちを果たすのです。
あれ?と思われた方もいらっしゃるかもしれません。
歌舞伎の舞台は、初演当時の幕府に遠慮して、
舞台を足利幕府時代とし、登場人物の名前も、大石内蔵助→大星由良之助といった具合に
変更しているのです。
さて、この忠臣蔵、
なぜこんなに長い間、人気の演目なのか。
それは
「想いをなし遂げられなかった人の想いを受け継ぎ紡いでいく物語」として
不変性を持っているからなのだ…と、歌舞伎の舞台を見ながら気が付きました。
一般には、仇討ちのお話しと言われています。
いけ好かない上司に倍返しすると話なので、江戸時代版「半沢直樹」と言えるかもしれません。
第二次大戦後、「仇討ち」を促す危険性があり封建的として、進駐軍から上演禁止令が
出されたこともあります。
でも歌舞伎の「仮名手本忠臣蔵」は、実は仇討ちの経緯は殆ど描かれていません。
発端となった刃傷事件とお家取り潰しの状況と、途中で大星由良之助最後の討ち入りぐらいです。
ちらちらと、四十七士がダウ地に加わる経緯は書かれますが、
もっとも上演される幕の主人公「早野勘平」なんて、
仇討ちの前に自死しなければならない状況に陥ってしまうのです。
塩冶判官や早野勘平のように、
成し遂げたいことがあっても成し遂げられなかった人々の思いを受け継ぐのが忠臣蔵の四十七士です。
人間、誰しもやりたくても達成できなかったことがあるでしょう。
そんな万人の思いを受けとめるドラマが
「仮名手本忠臣蔵」なのだな…と思ったのでした。
ふとそんなことを考えたのも、私自身が、歳ごとに、そんな思いを重ねているかもしれません。