懐かしい中野史朗さんの帯
2020.05.27
わたしが着る着物は、ほとんどがリサイクルショップで買っていて、滅多に新作は買いません。
久しぶりに購入したのが写真の帯です。仕立て上がって、つい先日、手元に届きました。
この帯を染めたのは、中野史朗さん。
以前、私が染色を習いに行っていたときの先生です。
着物を着始めた頃で、どんな技術で着物というものが成り立っているのか、自分で確かめてみたくなったからです。(当時、和裁にも挑戦しました…トオイメ)
当時、中野さんは古更紗の復活に取り組まれていて、その情熱に感銘した私は、「イケメン先生」と呼んでブログを書いていたのでした。
その後、独立され、個展も開かれていたのは風の噂で聞いていました。
行きたいと思ったものの、遠方だったり忙しかったりで、そのままになっていました。
ところが、この春は、神楽坂からも比較的近い上野近辺で個展を開かれるとのこと。ちょうど文化会館にバレエを見に行くタイミングぴったり、ということで、出かけることができました。
国産綿を種から育てて紡いでいる白井仁さんとのコラボの個展。力強い日本製綿布に染められた型染めの世界に圧倒されました。
中野さんもお会いするのは、考えてみると10年ぶりぐらになります。
当時の工房でも将来を嘱望されていたものの、職人として自立するために退路を絶って独立されたこと。
決して楽ではなかったけれど、銀座の有名呉服店での個展がきっかけで、作品も売れるようになったこと。
人生の伴侶と出会い、石川県の古民家に移住することになったこと…
いろんなことがあだたけれど、染めることに真摯に向き合われる様子は変わられていない。
わたしがブログに書いていたものも読まれていたようで…「イケメン」などと書いていたんですよね。穴があったら入りたい、とはこのこと。
展示された作品の中で、どうしても頭から離れない一点がありました。
国宝「四騎獅子狩紋様錦」を写したもの。
野趣あふれる綿布に、中野さんの型染めが繊細に、でも力強く表されています。
格の高い柄の帯は、お茶会などに締められるものだけど、素材が綿ではそぐわない。でも、狩というスポーツを表すには、綿しかない…そんな面白いけれど難しいバランスの帯地です。
わたしは北海道に引っ越す。中野さんも石川に引っ越す。
もう会えないかもしれない…
そんなふうに考えたらどうしても離れ難くなり、結局、清水の舞台を飛び降りていたのでした。
その頃はね、コロナでこんなに仕事がなくなるなんて思っていなかってんですよ…💦
でも後悔してません。ええ、しませんとも。
眺めていて、エネルギーをもらえるものですから!