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「セクシー田中さん」漫画家のことに思ったこと~個人で働く人のメンタルヘルス対策

2024.01.31

ドラマ「セクシー田中さん」の原作者で漫画家の芦原妃名子さんがお亡くなりになりました。心からお悔やみを申し上げるとともに謹んでご冥福をお祈りいたします。

報道によると、ドラマ化のトラブルによる心労が原因と推測されているようです。私も亡くなったニュースの直前に、芦原さんのドラマの脚本についての経緯に関する投稿を読んでおり、ニュースを聞いたときにまっさきにそのことを思い出しました。

私はマスコミの事情をよく知る人間ではないので、テレビ局や脚本家、プロデューサーらについての責任などや役割分担についてはここでは言及しません。漫画家のように、独立して主に一人で仕事をする人のメンタルヘルスという観点で考えることが多く、そのことを記しておきたいと思います。

私自身も個人事業主として、在宅で仕事をする時間が多く、今回の芦原さんのことは他人事ではないと感じるからです。

◆繁忙と要望が通らないことで高ストレス状態だった

報道によると、芦原さんはお住いや仕事場から離れた栃木県で遺体で見つかったとのこと。遺書のようなものが残されており、自殺と推測されています。

2024年1月26日にご自身のブログ、およびXに投稿された内容によると、「原作に忠実に」という条件で、昨年の6月にドラマ化に同意したにもかかわらず、脚本はそうはなっていなかったとのこと。

重要だと思っていたシーンも盛り込まれていなかったり、キャラクターの性格が改変されてしまっていたため、漫画の出版社である小学館を通じて、ドラマのプロデューサーや脚本家と何度もやり取りを重ねてこられたのだそうです。芦原さん自ら、原作に忠実な脚本にするため、加筆修正を加えてこられたとい経緯も明かされていました。

何度も申し入れしたにもかかわらず、最終回の10回とそれに先立つ9回の脚本もその意図が反映されず、ついに芦原さんご本人が脚本を書かれたとのこと。ドラマの放映スケジュールが迫るなか、漫画の締め切りと重なり、タフな状況であったようです。

おそらく、ドラマ化が決まってからも、本来業務である漫画の執筆とテレビ局とのやり取りが重なり、昨年の後半は寝る間もないほどお忙しさが続いていたと推測されます。

まだ捜査中のこともあり断言はできませんが、芦原さんの残された内容から、亡くなられた原因は、過度なストレスに睡眠不足が重なり、抑うつ状態であり、そうした中で発作的に自殺を図られたのではないかと思われます。

◆働く人のメンタルヘルス対策、個人事業主は対象外

組織におけるメンタルヘルス対策は、平成期に自殺者数が3万人を超えたことを受け、国を挙げての重点施策が展開されたことにより、近年かなり進みました。
従業員が50人以上所属する全事業所が対象ではありますが、定期的に労働者のストレスの状況について検査を行うストレスチェックの実施が義務付けられています。(従業員50人未満の企業は努力義務)

高ストレス者には、本人の申し出により医師の面談を行うほか、労働時間短縮や業務の見直しなどの対策などを講じなければなりません。

しかし、個人事業主は、企業から業務委託を受けていても、こうした法律による規制の対象外です。
芦原さんの場合、テレビ局とどのような契約があったかつまびらかではありませんが、ドラマ化に伴い、半年以上にわたり、通常の業務に加えての負担が生じていたと思われます。

個人事業主、特に一人で机に向かって仕事をする場合は、さらに課題があります。メンタル不調は日々の生活態度や身心の不調に表れるといわれていますが、そうした変化に気づく人が身近にいない場合も多いことです。

組織であれば、職場の同僚や上司が日々を共にする中で、そういった変化に気が付きやすい。しかし一人で屋内にこもって仕事をしていると、他に気づいてくれる人がなかなかいません。

こうした変化は自分では気づきにくいといわれています。たとえ気づいたとしても、「なんとかなる」「~~まで頑張れば乗り越えられるはず」と、無理をしてしまいがちです。

また、「業務委託」の場合、求められる成果を期日までに納品して初めて収入も発生します。もしそれができなければ、次の発注はない(と少なくとも受けた側は思う)。
芦原さんほどの実績がある方であれば、「次がない」ということなかったと思いますが、これまでの経緯や責任感から、多少の体調不良があっても無理をせざるを得なかったのではないかと思うのです。

◆個人事業主へのメンタルヘルス対策も早急に!

私個人は、会社員から個人事業主になって、改めて会社の健康診断のありがたさを感じました。もちろん個人事業主でも地方自治体や業界の健康保険組合などの健診受診機会はあります。が、自分ひとりだと、つい先延ばしにしてしまうことも。
また現時点では、地方自治体ではメンタルヘルスチェックは対象となっていません。(私の住む地域だけ?)

自らの健康は自己責任なのが個人事業主…なのかもしれませんが、だとしたらメンタルヘルスの知識や理解を促進したり、自分で対策をとることを後押しするような施策を国や行政はとってもらいたいと思います。
また、業務委託関係であっても過度なストレスや長時間労働を強いる場合の委託企業側の規制や罰則も必要なのではないでしょうか。

芦原さんのような悲劇を繰り返さないために、個人事業主を対象としたメンタルヘルス対策を充実させてほしいと思います。

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