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メンタルヘルス研修で思わず…

2025.06.04

今年の春(だいぶ前のことになりますが…💦)、新規で大手物流会社さんのメンタルヘルス研修に登壇しました。
カウンセリングを担当している企業様に以前勤めていた保健師さんのご紹介というありがたいご縁です。

管理職を対象とした研修なのですが、難しいのは「物流」という業態。構造的にメンタルヘルス対策が打ちにくいのです。

たとえば、スタッフは非正規雇用が多く、入れ替わりも激しい。また客先常駐のスタッフも多いとのこと。勤務もシフト制なので、日常のコミュニケーションが取りにくい。映画「ラストマイル」の現実に直面させられている職場です。

これまで全社的なメンタルヘルスの研修は行ってこなかったということなので、まずはメンタルヘルスの基礎知識をお伝えするところからスタートしました。

具体的な方策については、こちらから伝えるというより、職場同士の情報交換を進める形にしました。大企業で全国の職場ごとの状況はまちまちですが、各職場で工夫されていることもあり、他の職場にも参考になるからです。何より、管理職同士が「一人ではない」「ほかに聞けば参考になる情報がある」という気持ちをもっていただきたかったのです。

その中で、相手の反応に不安を覚えている声が少なからず出てきました。「自分が声をかけたら相手にどう思われるか?」
昨今、ハラスメント防止策が展開されていることも、上司から部下に声替えすることをためらわせる一因でしょう。

そんな中、お一人、積極的とは思えない姿勢の方がいました。終始、腕組して椅子にもたれかかっています。

各職場の取組についてのグループディスカッションが終わった時、まとめようとした私を遮るように、その方が「部下が死んじゃったんだよ、自殺」とおっしゃったのです。

ああ、自殺してしまった部下のことをずっと胸に抱えていらしたのか…
腕組みしていたのは、その時のことをもいだしてお辛い気持ちの表れだったのかも…

そんな風に感じた私は、考えるより先に言葉が出ていました。
「私も、人材育成に携わっていた時、研修中の新入社員が自殺してしまったことがあります」
「カウンセリングの仕事をするようになったのは、その時の経験が影響しています」「ずっと『なぜあの時、ちょっとでいいから声をかけなかったのか』と後悔しています」「だから、皆さんには私のような後悔はしてほしくないんです」
「もしかすると、相手はいやがるかもしれない。でも声をかけなかったら、しなかったことにずっと後悔します。声かけて嫌がられたら、気分は良くないかもしれないけれど、『ああ、嫌がられるのか』で済みませんか?」

思いがけず出てきた言葉でした。
でも、その時、場の空気が変わった感じがしました。腕組みしていた人も腕をほどき、頷いてくれたのが見えました。

実は、その会社に来る途中、自殺した新入社員のお父様が勤務していた会社のオフィスがあったのです。社名を見て、その出来事がふと思い出されていたのでした。

なんだか、亡くなった新入社員が、私に初心を思い出させてくれたような気がしています。

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