自らの手で「境遇」を書き換える力 ――『ばけばけ』から『風、薫る』へ繋がるバトン
2026.04.05
<「ばけばけ」と「風、薫る」:画像は、AI作成>
朝ドラが『ばけばけ』から『風、薫る』へとバトンタッチしました。
一見、同じ明治期を背景にスタートしたという共通の時代背景以外にも、この二作はキャリアコンサルタント視点で見ると、ある共通した「地続きの物語」が見えてきます。
それは、「教育が、いかに女性の人生を『結婚』という唯一の手段から解放したか」という点です。
「川」を越えた女性たち
主人公のトキ、そして友人のおサワやおナミ。彼女たちは皆、物理的にも社会的にも、あの川を越えて「お城側」へと自らの足で移っていきました。
特に印象的だったのは、おサワの姿です。
彼女は、自力で正規教員試験に合格し、母と自分の生活を十分に賄えるだけの仕事を手にしました。これは、当時の女性にとって革命的なことだったはずです。
それまでの時代、女性が自らの境遇を変える手段は、事実上「結婚」しかありませんでした。家柄が良かったり、経済的に豊かだったりする相手と結ばれることで、間接的に人生を乗り換える。しかしその構造こそが、男性側から「女はいいよな、結婚という逃げ道があって」という、無理解で残酷な揶揄を生む原因にもなっていたのです。
「教育」という名の翼
おサワが成し遂げたのは、誰かの力を借りて川を渡ることではなく、自ら漕ぎ出す「知恵と資格」を手に入れることでした。
そして今、新しく始まった『風、薫る』。
ここでも、明治という武士の世からの大激変期を背景に、女性を取り巻く環境の「残酷さ」が容赦なく描かれています。主人公・りんは、名門の生まれでありながら父が亡くなり困窮する中で、望まない結婚を決めます。今後の展開の詳細はまだわかりませんが、その後、彼女が志すのは「看護」という専門職の道です。結婚は、彼女にとって「望ましい未来」とはならなかったのでしょう。
本作もおサワの物語と同様に、教育を受けることで、誰かの付属物ではない「自分自身の道」を切り開いていく過程を描こうとしています。
『風、薫る』の主人公・りんの中に、あのおサワが見せた誇り高い背中が重なって見えます。
「川」の向こう側に残された少女へ
そして、私がもう一人、どうしても忘れられない存在がいます。 それは『ばけばけ』で、あの川向こうの長屋に取り残されたまま、去りゆくおサワやおトキたちを見送った少女の姿です。
彼女には、おサワさんのような道を目標にしながらも、単に「あちら側」を目指すだけではない人生を歩んでほしいと願わずにはいられません。たとえ物理的に川を越え、お城側に戻ることはなかったとしても。教育という武器を手にし、今自分が立っているその場所で、しっかりと根を張り、自分なりの生きがいを見つけて生きていく。
「どこにいても、私は私として生きていける」
そんな確信こそが、教育がもたらす真の自由ではないでしょうか。 『風、薫る』が描く看護の道も、きっと多くの女性たちに、それぞれの場所で自立するための「光」を見せてくれるはずです。
キャリアの「自律」の物語
家柄や性別という、自分では選べない枠組みに縛られていた時代から、教育によって自由を手に入れようとした彼女たちの奮闘。それは、現代の私たちにも通じる「キャリアの自律」そのものです。
現代を生きる私たちもまた、先人が切り拓いた学びの地平に立っています。 どんなに厳しい環境にあっても、学び続けることで、誰かの付属物ではない「自分自身の道」を切り拓いていける。そのために、私に何ができるのか…?朝ドラを見ながら、そんなことを考えます。
現代を行ける私たちは、誰もが教育機会を享受できると胃環境づくりにもっと注力しないとならない…そんなことを思います。
この新しい物語が、困難な状況にある現代の女性たちにどんな勇気を与えてくれるのか。一人のキャリアコンサルタントとして、そして一人の視聴者として、今期も丁寧に追いかけていきたいと思います。
個人の力を組織力へ。ダイバーシティ推進・ミドル活性化は朝生容子へ